1. 気楽な本
★★★★☆ あの胸が岬のように遠かった
----河野裕子との青春
永田和宏著 2022 新潮社
もちろん河野さんは永田氏の亡き妻であり、戦後の女流歌人として指折りに入る才人でした。この本では、二人が結婚するまでの時期(つまり恋人同士であった時期)のあれこれについて詳しく書かれています。二人は違う学校の学生同士であったわけですが、「胸が」近くなっていた頃のこと、愛撫の場所を見つけるのに困っていた二人が、京都の山の森に少しだけ入った所で、激しく愛し合ったエピソードまであらわに書かれています。(昔----1965年頃までは、山の中でそんな風に若い男女が愛し合う、なんていう風景があったような気がします。)
それもこれも、永田氏が書けば全然いやらしくありません。いや、やはり少しはいやらしいかなあ。
河野裕子さんは、永田氏の心(氏は物理学科卒業の生物学者ですから、心でなく「大脳」というべきでしょうか)の中で、今も生き生きと生き続けているのです。
★★★★☆ 国商 最後のフィクサー葛西敬之
森功 著 2023 講談社
葛西氏(JR東海元会長)と安倍晋三氏は盟友だったはずですが、長い時間を経ずにして2021年と2022年、二人はこの世を去りました。かねがね葛西氏がどういう人物であったか私は興味がありましたが、この本で十分に理解しました。なお、葛西氏の事業としては東海リニア新幹線が有名です。この事業をめぐっては数人の方々が諸問題を指摘していますが、私は下記だけは読んでいます。
★★★★☆ リニア中央新幹線をめぐって
---原発事故とコロナ・パンデミックから見直す
山本義隆著 2021 みすず書房
氏の名前には覚えのある人も多いのではないでしょうか。なお、私が大学に入学したのは1970年でしたが、その頃はまだ学生運動の残り火が消えてはいませんでした。私は学生運動には全く参加していませんが、本来は優秀な物理学者に成る道を歩んでいた山本氏が、時代の流れに押し流されてその方面のリーダーになり、結局は過激さを増して世間からは反感をもたれることになった。
氏の本性を私が知るはずはありませんが、正義感の強い氏に対しては複雑な思いをもちます。
★★★★☆ 踊る菩薩---一条さゆりとその時代
小泉孝保著 2022 講談社
彼女のステージや映画を私は見ていません。(その職業を知らない人は自分で調べてください。)
サービス精神旺盛なさゆりさん、結局は刑務所に入れられたり、身近にいる人間たちの質の悪さなどのため幸せでない後半生を送りました。
前半生が幸せならそんな仕事にはつかない。でも一生懸命生きたさゆりさんには、「よく頑張ったね」、と生きていたら声をかけたかったと思います。
.2. 文学・エッセイ系
★★★★★みずうみ 川端康成 年
幻想的で変態的で哀愁ただよう小説です。ユーミンは悲しいときに「卒業写真」を開くそうですが、私は気がめいっているときに、なぜかこの小説を読みたくなります。孤独な銀平の行状を読むと、自分もみじめでさみしくなりますが、どこか心がなぐさめられるのです。川端氏の小説の中では名作には入ってないかもしれませんが、三島由紀夫はこれを激賞しています。この冬もこの小説を読みました。
★★★★☆ 父と暮らせば 井上ひさし
2002作 新潮文庫
ご存知のとおり戯曲です。舞台は見られないので本で読みました。本で読んでもいいですが、おそらくは劇でみた方がずっと良いだろうと思います。
死んだ親と話をし、束の間に共に生きる、多くの人はそういう経験があるのではないでしょうか。私もあります。甘美な世界、といってもいいかもしれません。生きているときはいざこざもあったが、死んでしまえばよい記憶しか残りませんからね。
山田太一の「異人たちとの夏」もそういう異界のお話でしたね。
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★★★★☆ 亡き者たちの訪れ 若松英輔著
2022 亜紀書房
3. 思想・社会・評論系
・ 理想の国へ
大澤真幸・平野啓一郎 対談集
2022 中公新書
・この世界の問い方
普遍的な正義と資本主義の行方
大澤真幸 著 2022 朝日新聞出版
・ 破壊者たちへ
青木理 著 2021 毎日新聞出版
・ 武器としての資本論
白井聡 著 2020 東洋経済新報社
・ デモクラシーか資本主義か
危機の中のヨーロッパ
J. ハーバマス著(三島訳)
・激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960~1972
池上彰・佐藤優 著 講談社現代新書 2021
・漂流 日本左翼史 理想なき左派の漂流 1972~2022
池上彰・佐藤優 著 講談社現代新書 2022
・自壊する日本 円安と補助金で
野口悠紀雄著 2022 ビジネス社
・日本解体論 白井聡・望月衣塑子著 2022 朝日新聞出版
・シルバーデモクラシー 戦後世代の覚悟と責任 寺島実郎 著 2017 岩波新書
4. 経済・歴史系
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